ばあちゃんと梅仕事
2020/06/29
私のばあちゃんはとにかくよく働く人だ。働くといっても、お金を得るための労働ではなくて、日々生活していくための仕事。一年中、それこそ嘘ではなく365日、手を体を動かし何かしらの仕事に取り掛かっている。
昨日は毎年恒例の梅仕事第一弾の日で、「時間あったら来て手伝ってくれないか」と言われ、ちょっと興味もあったので、初めてお手伝いをした。
内容は、梅干しを作るときに使うしそ漬けを仕込むこと。今年は自宅の分と、ばあちゃんの妹たち二人の分も合わせて、38kgの梅を漬けるらしい。38kgって。聞いたときはその量にクラクラしたが、ばあちゃんたちの予定よりも早く作業を終えられたので、少しは役に立てたらしい。よかった。
作業手順は、
①前日にしそを枝から外し、水で洗ってざるに広げて干しておく。1kgにつき1束のしそが必要だそう。
②ざるで干しておいても水分が残っているので、それをキッチンペーパーで拭き取り、桶に入れていく。しそ1束分に対し、15gくらいの塩を混ぜ込む。
③1時間から1時間半くらい置いておき、その後しその灰汁を抜く。すり鉢で塩が馴染んだしそを揉み込むと、どんどん黒紫の灰汁が出てくる。それをぎゅーと絞る。
④灰汁をとったしそに、去年の梅漬けで出た梅酢をたらし、すり鉢で揉み込む。今度は鮮やかな紫の水分が出てくる。小さな泡がたくさん出てくるまで揉み込んだら、消毒したタッパーに並べ、水分を上からかける。蓋をする。
⑤梅自体を仕込むまで、冷蔵庫で保管する。
とこんな感じ。使う道具も、やり方もシンプルなのだけれど、量が量だから結構な重労働だった。梅酢を揉み込んだ掌は真っ赤っかで、力もいるから腕全体がプルプルした。これを毎年やっていたのか。
何も考えずに、うちのは酸っぱいなーと思いながら食べていた梅干し。想像していた以上に手が込んでいて、驚いた。
ばあちゃんは、うまくできるか心配で、前日の夜うまく寝付けなかったらしい。不安になっちゃうくらい、心を込めてやっているんだなぁ。私は最近心配で寝られないってことあったかな。ばあちゃんの梅にかける熱量の大きさを改めて知る。
振り返ってみると、私が生まれ育った環境は、ばあちゃんのそんな熱量に囲まれていた。
畑では何種類もの野菜を育てていて、いつも新鮮なものが食べられるし、梅干しはもちろん、白菜の漬物やたくあんも自家製、雨で外に出られない日は家の中でベリーのジャムやリンゴ酢などをこれまた何kgも仕込む。
手間をかけるということを厭わない、家での働き。
同じようなことを指すはずの、「おうち時間」や「丁寧な暮らし」とは異なる気がするのはどうしてだろう。
ばあちゃんの仕事は、周りからどんな風に見えているかとか、多分気にしていない。自分や家族のために、生活していくうえで必要なものを、季節に合わせて作り出しているだけだ。ばあちゃんだけのカレンダーがあって、毎年、何十年も繰り返している自分の手順で、働き続けている。
私は逆だ。どう見えるかをいつも意識してるなぁ。どう見せたいか、が先行している気がする。別に自分がよければいいのにね。
SNSや雑誌、テレビには、見られ方を意識した綺麗で洗練された暮らしがあるけれど、そうではなくても豊かに暮らすことはできて、そのお手本は身近にあったみたいだ。ずっと当たり前だったから見落としていたけれど、ばあちゃんは季節を感じながら日々働き、生活している。
梅の仕込みはいつ始まるのかなぁ。またお手伝いしにいってみよう。