とまり木

時には枝のように、時には鳥のように

megum

<とまり木前夜>久恵編②


東京でしていた仕事について、書いてみようと思う。

私は通信キャリアの会社で社会人生活をスタートさせた。
業界からすれば革新的な売り方をして、どんどん規模を大きくなっていった会社だった。そのスピード感、勢いに惹かれて入社を決めた。
通信自体が暮らしになくてはならないインフラになっていて、自分の仕事が多くの人の生活を豊かにすることができると思った。

入社してすぐは、新人研修でコールセンター勤務をしていた。毎日毎日40件近い電話を受けて、さまざまなお客さんと会話をした。
それまでは分からなかったけれど、電話はその人の感情が真っ直ぐに伝わってくるものだ。敢えて表現するつもりはないのだろうけれど、怒りや申し訳なさ、喜びなど、たくさんの感情を伝えられた気がする。
逆に、自分の気持ちも同じように相手に伝わってしまうのだなぁ、ということも知った。

また、この研修中に気付いたことがあった。私は自分の腑に落ちないことはやりたくない性格だったようだ。

会社としては契約数を減らす訳にはいけない。でも解約したい人はもちろんいて、電話がかかってくる。そんな人たちに何とか契約を続けてもらおうと、色々な手を尽くす。
私はそれがどうしても苦手だった。
相手の事情関係なしに、マニュアル通りに解約を抑止する。確かに契約数は保てるけれど、お客さんを騙しているような気持ちになった。
だから、本当に必要に思われる人以外は提案していなかった。(たまに、契約直後でその時点で解約すると多額の解約金がかかる方がいたからどうやって解約すれば一番安いか、勝手に計算して伝えていた)
マニュアル通りにやらないことを何度か注意されたけれど、結局最後まで従わなかった。
そこの会社の社員として、おそらく失格なのだろうけれど。

そんな日々を過ごしたあと、本配属で東京に戻ってきた。

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